監査難民とは?監査難民を避けるためには
IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、監査法人との契約は重要なステップです。しかし近年、監査法人の人手不足や審査の厳密化により、監査を受けられず困難な状況に陥る企業が増えています。このような企業は「監査難民」と呼ばれ、IPO準備の大きな障害となっています。この記事では、監査難民とは何か、その背景や原因、そして監査法人との契約をスムーズに進めるためのポイントについて解説します。
監査難民とは何か?
監査難民とは、IPO(新規株式公開)を目指す企業が監査法人と契約できず、監査を受けられない状況のことです。この問題が増えている背景には、次の要因があります。
⚫︎監査法人の人手不足:多くの監査法人が人材不足に悩んでおり、新規案件をすべて受け入れられない。
⚫︎上場企業の不祥事増加:不正会計などの問題が増え、監査の審査が厳格化。
⚫︎働き方改革の影響:残業時間の制限により、1件あたりの業務を効率化する必要がある。
これらの要因により、監査法人が契約する企業を厳選する時代となっています。
監査法人が企業を選ぶ時代に
監査法人は、リスクが低く、業務がスムーズに進められる企業を優先します。特にIPO案件では効率が重視され、手間がかかりそうな企業は敬遠されることがあります。ただし、監査法人もIPO実績を増やすために積極的な契約を考えることがあるため、企業側が適切な準備を行えば契約の可能性は十分に高まります。
監査法人が重視する3つのポイント
1. IPOの実現可能性とスケジュールの確実さ
監査法人は、企業が本当に計画通りにIPOを実現できるかを厳しくチェックします。
⚫︎事業計画が現実的か?:計画が非現実的だと、スケジュールが遅れ監査工数が増える。
⚫︎合理的な根拠に基づいているか?:市場調査や財務データに基づき、実現可能性が高いかを判断。
例えば、売上の見込みが極端に楽観的であれば、監査法人は「計画倒れのリスクが高い」と見なして契約を避けることがあります。
2. 事業運営上のリスクが少なく、管理がしっかりしているか
企業が抱えるリスクには、事業の運営に関わるさまざまな要素が含まれます。例えば、不正会計、経営判断のミス、または財務情報の信頼性の欠如などです。これらのリスクが高いと、監査に多くの工数がかかり、契約を断られることがあります。また、内部管理体制が不十分な企業も同様に敬遠される可能性があります。監査法人が注目するポイントは次のとおりです。
⚫︎経営者の誠実さと信頼性:経営者が不正をするリスクが高ければ、監査法人は敬遠します。
⚫︎管理体制が整っているか?:
・決算がスムーズに行えるか?
・CFO(最高財務責任者)や会計担当者が適切なスキルを持っているか?
・必要な情報や資料が適切に整理されているか?
以下は具体例です。問題があるとリスクが高いと判断されます。
⚫︎決算に毎回長時間かかる。
⚫︎会計に関する基礎的な知識が不足している。
⚫︎在庫数が正確でなく、帳簿と実際の在庫が合わない。
⚫︎グループ会社が多く、その間の取引が不透明。
こうした問題がある企業は、監査法人から「リスクが高い」「手間がかかる」と見なされ、契約を避けられる可能性があります。そのため、早い段階で会計制度や管理体制の整備を行いましょう。
3. 採算が取れるか?
現在の監査法人は人手不足のため、採算が取れない案件には消極的です。
⚫︎報酬が適切か?:過去の報酬基準に頼らず、最新の相場を把握し、適切な報酬を提示することが重要です。
⚫︎将来的な成長性が期待できるか?:短期的な利益が見込めない場合でも、長期的な成長性を示せることが有利です。
よくある間違いとして、「過去のIPO成功事例を基に、当時の報酬基準で交渉しようとする」があります。しかし、現在の市場環境は変化しているため、これでは契約が難しくなります。
IPO準備の早期スタートが成功を左右する
IPOを成功させるには、監査法人に信頼される企業になることが不可欠です。そのためには、計画段階からの準備が重要です。
事業計画は、具体的なデータや実績に基づき、成長性と実現可能性を合理的に示す必要があります。希望的観測だけの計画では、監査法人の信頼を得るのは困難です。
また、企業内の管理体制を整えることもポイントです。監査法人に「手間がかかる」と思わせないために、決算作業の効率化や情報の適切な整理が求められます。CFOや会計担当者のスキル向上や、資料をすぐに提出できるシステムの整備も効果的です。
このように早い段階で準備を進めることで、監査法人との契約がスムーズになり、IPO成功に近づきます。
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