上場を目指してから実際に上場するまでに必要な費用はいくらですか?
上場準備には最低3年は必要とされていますが、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
上場を目指すにあたって、あらかじめ見積もっておくべき費用について、上場準備期間中に発生する主な費用を解説します。
なお、上場準備を始めるまでの期間や必要な準備については、以下の記事をご覧ください。
>上場を目指そうと思ったら、上場まではどれくらいの期間がかかりますか?
かかる費用の種類とは?
上場準備期間にかかる主な費用の種類です。
・監査法人への費用
・主幹事証券会社への費用
・IPOコンサルティング費用や弁護士費用
・組織体制の見直しや構築、人材補強にかかる費用
・上場申請書類等にかかる費用
・上場時にかかる費用
監査法人にかかる費用
上場準備段階で必要な監査費用は 1,150万円〜6,400万円程度 かかります。
企業の規模や状況によって異なりますが、上場準備中に発生する主な監査費用は「ショートレビュー」と「準金商法監査」の2つです。それぞれの概要や目的、費用について以下で説明します。
1. ショートレビュー:150万円〜400万円程度
上場準備の最初の関門ともいえる「ショートレビュー」は、現状の財務状況や内部管理体制が、上場基準にどれくらい適合しているか?を調べ、上場に向けた課題を洗い出す調査です。
>監査法人にお願いするショートレビューとは何ですか?
上場基準と現状のギャップを把握し、上場審査に通るために必要な改善項目を明確にするために行います。
ショートレビューの内容は以下の通りで、小規模な企業では150万円程度、大規模な企業の場合は最大400万円ほどかかります。
- ⚫︎監査法人が財務諸表や内部管理体制などの主要な項目をチェックする
- ⚫︎上場に向けた体制構築のアドバイスが行われる
2. 準金商法監査:期ごとに1,000万円〜2,000万円程度
「準金商法監査」は、企業の財務諸表が適切に作成されているか、会計基準に則っているかを確認する重要な監査です。直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(N期) の3期にわたり実施されます。
投資家保護の観点から、財務諸表の信頼性を確保するために行います。準金商法監査を通して、金融商品取引法に準拠した財務情報を提供する体制が整っているかを証明します。
準金商法監査の内容は以下の通りで、各期ごとに 1,000万円〜2,000万円程度必要です。つまり、3期分合計で 3,000万円〜6,000万円程度の負担が発生することになります。
- ⚫︎各期ごとに、収益認識や資産評価、内部統制の適正性を含めた徹底的な監査を実施
- ⚫︎必要に応じて調整事項が発生し、その対応も含まれる
主幹事証券会社にかかる費用
上場準備段階で必要な主幹事証券会社への費用は、年間500万円〜2,000万円程度 かかります。
主幹事証券会社は、上場準備中から上場に至るまでの全般的なアドバイザーとして企業を支援します。上場時には株式の引受けも行い、企業にとって重要なパートナーになります。
>株式の引受けとは何ですか?
主幹事証券会社の役割は以下の通りで、通常、年間で 500万円〜2,000万円程度 の費用がかかります。
- ⚫︎上場準備中は、財務や内部管理体制に関するアドバイスを提供
- ⚫︎上場時には株式の引受けを通じて、スムーズな市場デビューを支援
- 主幹事証券会社との契約時期は、一般的にはN-2期からN-1期の間に契約することが多いです。
IPOコンサルティング費用や弁護士費用
上場準備段階で必要なIPOコンサルティング費用および弁護士費用は、年間500万円〜3,500万円程度 かかります。
上場準備を円滑に進めるためには、財務面だけでなく、法務やコンサルティングの専門家によるサポートも重要です。
1. IPOコンサルティング費用:年間500万円〜1,500万円程度
上場準備から手続きまで、主幹事証券会社以外に専任のコンサルティング会社を起用するケースもあります。IPOコンサルティング会社は、上場審査に必要な各種書類の作成支援や上場戦略の立案を行い、主幹事証券会社と連携して準備を進めます。
IPOコンサルティング会社の役割は以下で、一般的に年間 500万円〜1,500万円程度かかるとされています。
- ⚫︎上場申請書類や開示資料の作成支援
- ⚫︎内部管理体制の構築支援
2. 弁護士費用:500万円〜2,000万円程度
上場準備期間中には、法務に関する作業が増えます。法令の遵守や契約書の整備、内部統制の見直しなど、弁護士のサポートが必要不可欠です。
弁護士の役割は以下ので、総額で500万円〜2,000万円程度ですが、弁護士の稼働時間数によって変動する可能性があります。
- ⚫︎法令に準拠した手続きの進行支援
- ⚫︎契約書や社内規定の整備
- ⚫︎内部統制の改善とアドバイス
組織体制の見直しや人材補強にかかる費用
上場準備段階で必要な組織体制の見直し、人材補強、ITシステム投資にかかる費用は1,000万円〜3,000万円程度と見積もられます。
上場を成功させるためには、経営管理体制の強化、新たな人材の採用、そして業務効率化を図るITシステムの導入が重要です。これらの目安を出すことは難しいですが、1,000万円〜3,000万円程度かかるかもしれません。
1. 組織体制の見直しと人材補強
上場準備中には、経理、財務、内部監査、法務などの部門で専門性を高め、増加する業務に対応するための体制強化が必要です。
⚫︎必要な役員体制の整備
⚫︎経理、財務、人事など専門分野の人材を補強
2. ITシステム投資
業務の透明性やセキュリティ強化、不正防止のためには、ITシステムへの投資が不可欠です。
⚫︎業務フローやデータの可視化。
⚫︎迅速な決算作業を実現するための効率化。
⚫︎監査対応のためのデータ整理システムの導入。
上場申請書類等にかかる費用
上場時に必要な上場申請書類等の印刷費用は 200万円〜500万円程度 かかります。
上場申請の際には、多くの公式書類が必要となり、これらを専門の印刷会社に依頼することが一般的です。
公式書類には、上場申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部)、有価証券報告書、目論見書など、証券取引所に提出するための公式書類があります。これらの書類は、証券取引所が企業の事業内容や財務状況を確認し、上場適格性を審査するために使用されます。
公式書類の内容は以下で、印刷会社に支払う費用は200万円〜500万円程度を見込んでおくと安心です。
⚫︎Ⅰの部・Ⅱの部:企業情報や財務データを含む重要な上場書類。
⚫︎有価証券報告書:企業の業績や経営状況を詳細に示す報告書。
⚫︎目論見書:投資家向けに発行する資料。
上場申請書類等の印刷費用は、上場準備の一環として計画的に予算に組み込む必要があります。書類の正確さと質の確保のため、専門の印刷会社との連携が重要です。
上場時にかかる費用
上場に必要な費用には、上場審査費用、新規上場費用、株式の公募および売り出しに係る費用があります。
上場準備期間中にかかる費用(監査法人や主幹事証券会社、体制づくりのための人材補強、法務サポートなど)に加え、実際に上場する際には以下の費用が必要です。
1. 上場審査費用および新規上場費用
上場する際にも費用がかかります。上場費用は、プライム市場とグロース市場とスタンダード市場によって金額が変わります。
市場区分 | 上場審査料 | 新規上場料 |
プライム市場 | 400万円 | 1,5000万円 |
スタンダード市場 | 300万円 | 800万円 |
グロース市場 | 200万円 | 100万円 |
>プライム市場やグロース市場やスタンダード市場の違いは何ですか?
上場審査費用
上場適格性審査のために必要な費用です。
新規上場料
上場承認後に支払う手数料で、市場によって金額が異なります。
2. 株式の公募および売り出しに係る費用
項目 | 計算方法 |
公募に係る料金 | 公募株式数×公募価格×0.0009 |
売出しに係る料金 | 売出株式数×売出価格×0.0001 |
公募にかかる費用
上場して、新規発行される株式(公募株式)を市場で公開するには手数料がかかります。この手数料は、主幹事証券会社が新規株式の公募を円滑に行うためのサービス提供に対する対価であり、一般的に公募価格に基づいて計算されます。
売出しにかかる費用
未上場時点で会社の株式を保有している株主(創業者、経営陣、VC、投資家など)が、保有する株式を市場で売却する際にかかる手数料です。
NextIPOClubの取り組み
上場準備中に直面する課題は企業ごとに異なります。そのため、Next IPO Clubでは、上場を果たした企業の体験談や成功事例を共有し、これから上場を目指す企業が直面しうる問題を事前に把握し、解決策を見出すためのサポートを行っています。
> 上場した経営者の〇〇だらけの体験談
上場を目指す経営者にとって、重要なのは多くの上場経験者からの生の話や、上場するうえで転ばぬ先の杖となる相談先があることです。
Next IPO Clubでは、知識ゼロからでも上場に向けて相談したりすでに上場している先輩経営者から話を聞くことが出来るコミュニティです。
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