上場するために必要な売上や利益、社員数などの条件とは?
上場は企業にとって成長の大きなステップですが、そのためには厳しい条件をクリアしなければなりません。上場審査では、売上高や利益、社員数など、企業の規模や成長性、財務的な安定性が重要な要素となります。ただし、これらに明確な絶対的な基準があるわけではなく、企業ごとの状況に応じた目安が審査されます。本記事では、上場に必要なこれらの条件について具体的に解説し、各市場ごとの基準を詳しくご紹介します。
上場に必要な売上や利益、社員数の目安
上場にあたって、売上高や利益、社員数に関して明確な絶対基準が設けられているわけではありません。ただし、市場ごとに目安となる数値があり、企業規模や成長性に応じた評価が行われます。
市場 | 売上高の目安 | 営業利益や黒字の条件 | 社員数の目安 |
プライム市場 | 数百億円以上 | 継続的な営業利益10億円以上 | 通常数百人規模が一般的 |
スタンダード市場 | 数十億円程度でも可 | 継続的な黒字経営 | 50〜100人以上が望ましい |
グロース市場 | 比較的低くても可能 | 黒字化の見込みや成長計画の具体性 | 特に明確な基準はない |
これらの基準を満たすことが、上場審査の通過において重要です。それでは、それぞれの基準について詳しく見ていきましょう。
上場基準の3つの主要な審査基準
上場するためには、次の3つの基準をすべて満たす必要があります。
- 形式要件:企業の売上高、利益、社員数など、数値的な基準に基づく評価
- 実質要件:企業の持続的な成長性、経営の健全性など、数値的な判断が難しい評価
公益および投資者保護の観点:投資家の保護や社会的な信頼性に関わる基準
1. 形式要件(数値的な基準に基づく評価)
形式要件は、数値的な基準に基づき、企業の財務状態や規模を評価するものです。主に、次のような項目が審査対象になります。
- 売上高:市場規模や成長性を示すために一定以上の売上が必要です。
- 利益:継続的な黒字経営が求められます。
- 社員数:一定の事業規模や安定性を示すため、適切な社員数が必要です。
- 株主数:株式の流動性と投資家の分散を確保するために重要です。
- 流通株式数と流通株式比率:市場での取引の流動性を保つために必要です。
- 事業継続年数:安定した事業運営を証明するために一定期間の継続が求められます。
- 純資産や時価総額:企業が長期的な安定性を持っているかを評価します。
各市場ごとの形式要件の比較
市場区分 | 売上高 | 利益 | 社員数 | 株主数 | 流通株式数 | 流通株式比率 | 事業継続年数 | 純資産 |
プライム市場 | 売上高100億円以上(または最近2年間の利益合計が25億円以上) | 最近2年間の利益合計が25億円以上(または売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上) | 基準なし | 800人以上 | 20,000単位以上 | 35%以上 | 基準なし | 連結純資産50億円以上 |
スタンダード市場 | 最近1年間の利益が1億円以上 | 最近1年間の利益が1億円以上 | 基準なし | 400人以上 | 2,000単位以上 | 25%以上 | 基準なし | 連結純資産が正(プラス)であること |
グロース市場 | 基準なし | 基準なし | 基準なし | 150人以上 | 1,000単位以上 | 25%以上 | 1年以上 | 基準なし |
企業はこれらの基準を満たすことで、株式市場で信頼されるための基本的な条件をクリアします。
2. 実質要件
実質要件では、企業の持続的な成長可能性や経営の健全性を重視します。形式要件と異なり、数値基準を設けることが難しい要素が多いため、より慎重に審査されます。
- 持続的な成長可能性:企業が中長期的に成長を続けるビジネスモデルや市場での競争力があるかを評価します。
- 経営の健全性:財務基盤の安定性やリスク管理、キャッシュフローの健全性などを審査します。
- 事業の競争力と市場での地位:同業他社との比較における競争優位性や差別化ができているかを確認します。
- 経営者および管理体制の信頼性:経営陣の実行力やビジョン、企業の内部管理体制が整備されているかが対象です。
- 事業計画の合理性:成長戦略や投資計画が現実的であり、実行可能なものかどうかが見られます。
- 財務の透明性および開示体制:適切な情報開示と透明性が確保されているかがポイントです。
- ガバナンス(企業策治):取締役会や内部監査体制が整っており、適切に運営されているかを審査します。
ESG(環境、社会、ガバナンス)への対応:環境負荷削減や社会的責任、企業としての持続可能性が重要視されます。
各市場ごとの実質要件の比較
市場区分 | 持続的な成長可能性 | 経営の健全性 | 企業ガバナンス | 市場評価や信頼性 |
プライム市場 | 安定的かつ中長期的な成長が求められる | 財務基盤の安定性と透明性、リスク管理が徹底されていること | 高度なコーポレートガバナンスと透明性が必須 | 市場からの高い信頼と安定した評価が求められる |
スタンダード市場 | 一定の成長基盤が求められるが、中程度の柔軟性あり | 財務的健全性は重要だが、柔軟な成長路線も考慮 | 適切な内部統制とガバナンスが必要 | 一定の市場信頼を確保しつつ、成長余地が考慮される |
グロース市場 | 成長性が最重要視され、特に高い成長ポテンシャルが求められる | 初期段階でのリスク許容もありつつ、将来的な財務健全化が重視 | 基本的なガバナンス確保と成長に応じた段階的強化 | 成長計画に対する市場からの信頼が特に重視される |
企業が成長し続けるためには、内部管理体制や情報開示の透明性が重要です。
3. 公益および投資者保護の観点
この基準では、企業が投資家の保護や社会的な信頼性を確保するための体制を整えているかを審査します。株主の権利を守り、反社会的勢力と関わりがないことが確認されます。
公益および投資者保護における主な審査項目
- 株主の権利やその行使が適切であること
- 重大な経営上の争いや紛争を抱えていないこと
- 反社会的勢力との関与を防ぐための社内体制が確立され、適切に運用されていること
各市場ごとの公益および投資者保護の観点の比較
市場区分 | 株主の権利保護 | 情報開示と透明性 | 反社会的勢力との関係排除 | 投資家保護のための内部統制 |
プライム市場 | 強固な株主権利保護体制が必須 | 厳格な情報開示と市場への迅速な情報提供が必須 | 厳格に確認され、リスクゼロが求められる | 高度な内部統制とガバナンス体制が必要 |
スタンダード市場 | 適切な権利保護が求められるが、プライム市場より柔軟 | 必要な情報を適切に開示する体制が必要 | 確認は行うが、成長を妨げない程度の柔軟性も考慮 | 適切な内部統制とガバナンスの確立が条件 |
グロース市場 | 基本的な権利保護が確保されていれば可 | 最低限の開示要件を満たしつつ成長に応じて強化 | 基礎的な排除体制の確立が求められる | 初期段階でも成長に応じた統制の整備が重要 |
企業がこの基準を満たすことで、投資家や社会からの信頼を獲得できます。
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